幽霊西へ行く(日语原文)-第24章
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警察の尋問《じんもん》は先《ま》ず、その後横井氏が寝室《しんしつ》から出て来なかったか、という点に向けられたのです。夫人はその問いに対して、昼食の時にも部屋《へや》の外から知らせたが出て来ず、それからも一度も外へは出て来なかった、と答えました。
しかしその言葉には明らかに偽《いつわ》りがあったのです。あのような巧妙《こうみよう》な殺人方法を考え出した彼女にも、大きな一つの見落としがあったのです。
N市のような雪国では、暖房装置《だんぼうそうち》は勿論《もちろん》完備しております。日本間でも冬になれば、小型のスト证蛉毪欷毪椁い扦工椤ⅳ长窝箝gにも、大型のスト证嫌靡猡丹欷皮ⅳ辘蓼筏俊
燃料はこの辺は普通《ふつう》、薪《まき》が使われているのですが、その部屋《へや》にもスト证蝹趣摔稀⑿饯然覓钉悉い筏靡猡筏皮ⅳ辘蓼筏俊¥筏泛韦韦郡幛衰攻醛‘ブの外《ほか》に炭火を火恪钉窑肖痢筏摔长贡匾ⅳ盲郡韦扦筏绀ΑE郡坤堡文康膜胜椤ⅴ攻醛‘ブだけで十分なはずです。そして小さな火悚艘欢趣长筏刻炕黏问倜钉袱妞撙瑜Α筏稀ⅳ嗓韦椁い韦猡韦扦筏绀Α¥ⅳ胜郡鈱g験してごらんなさい、せいぜい三時間ぐらいのものでしょう。五時間は灰に埋《う》めていない限り保《も》ちません。ところが加藤氏が部屋に踏《ふ》み込んだ時も、警察が到着《とうちやく》した時も、炭火はまだ灰になり切ってはいなかったのです。そしてその部屋の中には、炭取りがどこにも発見されなかったのでした。
横井氏が自分で部屋の中で炭火をおこしたならば、炭取りは部屋の中に発見されなければならないはずです。そして夫人の言葉が本当で、横井氏も部屋《へや》を出て来ず、夫人も部屋に入らないとしたら、炭火は一体|誰《だれ》がいつ何の目的でおこしたのでしょう。
夫人はその点では、一言も申し開きは出来ませんでした。ただおどおどと、意味のない言葉を口走っていただけだったのです。夫人の言葉もお手伝いの証言も、彼女を救うことは出来ませんでした。夫人はその場から、横井氏の殺害容疑者として、逮捕《たいほ》収容されてしまったのです。
ところが横井氏の死因《しいん》は、解剖《かいぼう》によっても判然《はんぜん》としませんでした。警察当局は躍起《やつき》となって証拠《しようこ》固めにかかったのです。そして遂《つい》に凱歌《がいか》が上げられたのでした。横井氏の親類のある薬剤士が、数日前夫人に、主人がほしいというのでといわれて、内密で砒素《ひそ》を渡《わた》したということが分かったのです。その量は相当のものでした。優に四人や五人は殺せる分量だったのです。ところが砒素《ひそ》ならば、解剖によって分からないはずがありません。遂にD大学で木下博士によって、ふたたび精密な解剖が行われました。そしてその結果、辛《かろ》うじて砒素中毒の痕跡《こんせき》が発見されたのです。しかしそれは普通《ふつう》のように、消化器に吸収されたものではなく、ガスとして呼吸されたものであり、そのため検出が困難だったのだ、ということでした、これは木下博士の、法医学上の新しい発見の一つでした。火恪钉窑肖痢筏翁炕黏稀⑴丐蛉紵啢工毪郡幛耸褂盲丹欷郡韦扦筏俊
犯行の方法はこのようにして、段々と明らかにされて来ました。夫人は一時ごろ炭火をおこして、部屋《へや》の扉《とびら》をノックして鍵《かぎ》を開かせ、火恪钉窑肖痢筏颂郡蛉毪欷撇课荬虺訾郡韦扦筏绀Α:峋悉虾韦庵椁氦恕㈡Iを内側からかけまた扉を椋Г袱蓼埂
ところが炭の中には砒素が混じてあります。日本間と摺钉沥筏盲莆餮箝gは空気の流通が悪く、ガスは集積して遂《つい》に横井氏を倒《たお》したのでしょう。それは殆《ほとん》ど瞬時《しゆんじ》の出来ごとだったのでしょう。横井氏は鼻疾《びしつ》に侵《おか》されていて、物の臭《にお》いが殆んど分からなかったそうですから、ガスの臭気《しゆうき》にも殆ど気がつかなかったのでしょう。
それでは加藤氏に、どうしてガスの存在が分からなかったか、という疑問が起こります。ところが加藤氏が部屋へ侵入《しんにゆう》した時には、廊下《ろうか》の天井《てんじよう》に近い廻転窓《かいてんまど》が開いていて、ガスは部屋の中から、発散してしまっていたのでした。
それを開いたのは誰《だれ》でしょう。夫人は激《はげ》しく追求された結果、玄関《げんかん》の呼鈴《よびりん》が鳴ってその廊下《ろうか》を通ったとき、その廻転窓が椋Г袱皮い毪韦藲荬膜い郡韦坤日Zりました。いつも加藤先生から、やかましく開放|療法《りようほう》に注意されており、この部屋に入る時には、必ず神経伲摔长畏櫎蜷_けておくのに、どうして今日は忘れたのだろう、と思って廊下《ろうか》から棒でつついて窓を開いたものだということでした。
警察当局はここまで来ると、もう夫人が犯人だということに、何の疑いも持たなかったのでした。横井氏の日記もそれを裏書きしました。
最近の記事の中には、妻に対する恐怖《きようふ》と疑惑《ぎわく》とが、まざまざとうかがわれたのです。そしてまた夫人が、その鍵《かぎ》の掛《か》かった手文庫の中に、初恋《はつこい》の人、野口兼二の手紙の束《たば》と写真を、秘め隠《かく》していた、ということも動機に対する傍証《ぼうしよう》の一つだったのです。
彼女を殺人罪で起訴《きそ》する証拠《しようこ》は、これでもう十分のように思われました。勿論《もちろん》彼女は犯行を認めようとはしませんでしたが、他の検事ならばこれだけで起訴を終わっていたことでしょう。しかし私は慎重《しんちよう》を期するのが常だったのです。犯行に用いた砒素《ひそ》の残りが、私にはどうしても欲しかったのでした。
警察当局は、まさか逮捕《たいほ》されるまで持ってはいないだろう。全部使ってしまったか、それとも残りは雪の中に捨てるかしたろう、という意見を出しました。しかし私は譲ろうとはしなかったのです。炭火の例でも分かるように、犯人には案外に手落ちがある。何度も砒素を入手することが困難である以上、第一回の犯行に失敗した場合を考えて、必ず余分は残してあるはずだ。そして加藤医師が一時間早く家に訪《たず》ねて来た以上、それは必ず家の中にあるはずだ。私はこのような信念を持ったのです。
ポ涡≌hに似ているのは、これから後の段階なのです。警察は血眼《ちまなこ》になって、家中を捜査《そうさく》しつくしました。親類や関係者の立ち入りも数日は禁止され、徹底《てつてい》的な捜索《そうさく》が何日も続けられました。畳《たたみ》は一枚一枚、畳表をはぎとって眨伽椁臁Ⅲ祗印钉郡螭埂筏沃肖我骂悿弦幻恫肖椁骸ⅴ豫螭虼獭钉怠筏筏茥蕱摔丹欷郡韦扦埂¥筏筏饯谓Y果は明らかに失敗でした。砒素《ひそ》はどうしても発見されなかったのです。
私の信念は大分ぐらついてきました。彼女は何度取り眨伽皮狻⒆苑证螣o罪を主張したのです。
「私は人を殺せるような女ではありません。どうか私の眼《め》を見て下さい。この眼は良人《おつと》を毒殺した女の眼でしょうか」
その二つの大きな眼は、私にこのような無言の叫《さけ》びを、浴びせているように思われました。私はたまりかねて、思わず眼をそらしたことも度々《たびたび》だったのです。
そのようにして幾日《いくにち》かが過ぎました。迷い続けていた私の所へ、横井氏の弟が訪《たず》ねて来たのです。
横井氏のただ一人の弟で、犯罪が行われた当時は樺太《からふと》へ旅行していたが、電報を見てあわてて、引き返したのだ、ということでした。
彼は今ではちょうど、あなたと同じ年ごろでしょう。二十四、五の、痩《や》せぎすの背の高い青年で、眼は狡猾《こうかつ》そうにすばやく動いておりました。どこか人を食ったような、生意気なところはありましたが、いろいろ話をした後で、彼は私にこう囁《ささや》いたのです。
「警察では砒素《ひそ》の発見に、随分《ずいぶん》骨を折っていたようですね。しかしあんな捜査《そうさ》方法では絶対に見つかるわけはありませんよ」
彼はこう言って鼻を鳴らして笑いましたが、私はその時何だか、自分まで馬鹿《ばか》にされているような気がして、思わずかっとなったのです。
「あなたは警察の捜査方法を、ご存じなのですか」
「ええ、警察に知り合いがいたので、頼《たの》んで立ち合いで跡《あと》を見せてもらいました。あれではまるでポ涡≌hの警視|総監《そうかん》そのままの捜査方法ですね。悪いことはいいません。デュパン流の飛躍《ひやく》した考え方を働かせるのですね。女の奸智《かんち》というものはいざとなると、あの小説の大臣ぐらいには働くものなのですよ」
嘲笑《ちようしよう》するような一言《ひとこと》を残して、彼は検事局を去りましたが、私はその時電気にでも打たれたように、頭の中にある考えが閃《ひらめ》いたのです。
私は早速警察署へ電話し、捜査主任を同道して、横井氏の家へ赴《おもむ》きました。そしてポ违钎濂靴螭韦瑜Δ士激ǚ饯恰ⅳ栅郡郡痈鞑课荬驐省钉筏椤筏伽菩肖盲郡韦扦埂
ところが夫人の居間へ来たときに、私の眼は夫人の鏡台の前に止まったのです。鏡台の上には粉白粉《おしろい》の箱《はこ》が一つ蓋《ふた》を開いたまま、出し放しになっていたのでした。
「君、これに気がついたかね」
私は傍《かたわ》らに立っていた主任にたずねました。
「いいえ、全然気がつきませんでした」
私はその答えをきいた時に、ぐっと心に思いこたえたものがあったのです。その外《ほか》には私の注意をひいたものはありませんでしたが、しかしその白粉の箱の中には、たしかに砒素《ひそ》が入っていたのでした……。
私の決心はこれできまりました。私は十二分の自信をもって、彼女を殺人罪として起訴《きそ》することが出来たのです。
彼女は公判|廷《てい》に於《お》いてさえ、終始犯行を否認しつづけましたが、私は最早何の迷いも不安もなく、殺人罪として死刑《しけい》を求刑《きゆうけい》しました。
判決は結局一等を減じて、無期|懲役《ちようえき》にきまりましたが、判決の決定した時に、私の方へ上げられた彼女の眼の光を、私は永久に忘れることは出来ますまい。あんな眼は私の長い検事生活にも、初めての恐《おそ》ろしい経験だったのです。
彼女は上告でも同じ判決を下され、結局服役中に病気で死亡したとききました。横井氏の弟は、その後応召し、北支で戦死したとかいうことです。
この事件は私が在職中に扱《あつか》った数多くの事件の中でも、最も忘れ難い事件だったのです。
湖水の表面は碧玉色《へきぎよくしよく》に美しく輝《かがや》きわたり、森の中で鳴いている蝉《せみ》の声が、はじめて私の耳に入った。私は今まで、夢中《むちゆう》になって彼の話に耳を澄《すま》していたのだった。
「どうも詳《くわ》しいお話を、有難うございました。なるほどポ巍旱痢钉踏埂筏蓼欷渴旨垺护ⅳⅳ胜郡摔饯问录斡洃洝钉筏颏瑜撙à椁护郡铯堡扦工汀
「そうです。あのような人間心理の弱点を巧《たく》みに把握《はあく》したポ稀ⅳ郡筏宋难飞悉瞬恍唷钉栅妞Α筏蚊蛑埂钉趣伞筏幛胩觳扭胜韦扦工汀
「勿論《もちろん》です。ポ翁觳扭摔纤饯庾{辞《さんじ》を惜《おし》む者ではありません。そして私などは、その点ではポ巫Α钉膜帷筏喂浮钉ⅳ筏驀L《な》める資格さえありません。しかし偅证丹蟆ⅳ长涡≌hには今一つの解答があると思うのですが」
「それはどういう解答なのですか。デュパンの推理に、あなたは铡嚒钉搐婴妞Α筏ⅳ毪趣いΔ韦扦工1摔狭⑴嗓说沥蓼欷渴旨垽虬k見出来たではありませんか」
「なるほど、あなたは『立派に』といわれましたね。手紙は邸内《ていない》にはない。というのが警視|総監《そうかん》の第一の解答でした。手紙は邸内にある。というのがデュパンの第二の解答でした。
彼は自らの解答にしたがって、立派に手紙を発見出来ました。しかし私の第三の解答では、それが『幸撙恕护刃拚丹欷毪韦扦埂
「あなたは何をいおうとなさるのですか」
「それでは、私の、あの小説に対する第三の解答を申し上げましょう」
盗《ぬす》まれた手紙は最初には邸内には隠《かく》されていなかった――。
私の推理はそれを根本の仮説として出発します。デュパンが大臣の邸《やしき》を訪《おとず》れたのは、警視|総監《そうかん》の三か月にわたる捜査《そうさ》が、失敗に終わった後だった、ということを忘れてはなりません。
総監は三か月の間、大臣の邸を捜査しぬいたのです。椅子《いす》のクッションには針が刺《さ》しこまれ、敷地《しきち》の煉瓦《れんが》の接ぎ目には拡大鏡がむけられたのです。
それにもかかわらず、大臣は平気で夜の間家を空《あ》けて外出しておったのでした。警視庁の一隊は強盗《ごうとう》を装《よそお》って、路上に彼の身体検査を行いました。それも一度や二度には止《とど》まらなかったのです。
その一方、大臣はその手紙を持っていることを力にして、一日一日と政治的な圧力を加えて行きました。そして三か月の捜査に疲《つか》れ切って、総監がデュパンの許《もと》を訪れた時には、大臣を取り巻く政治的な陰帧钉い螭埭Α筏稀ⅳ饯问旨垽蚣纯獭钉饯膜长肥褂盲返盲毪长趣颉ⅳいいà欷屑纯唐皮イ毪长趣隼搐毪韦颉⒈匾趣工攵坞Aにまで進行していたのです。
これがデュパンが、邸内に手紙がかくされている、と推理した根本の理由だったのですね。たしかに事態はその時は、そこまで進行していたかも知れません。しかし総監《そうかん》が捜査《そうさ》を開始した当時から、事態がそ