幽霊西へ行く(日语原文)-第25章
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進行していたかも知れません。しかし総監《そうかん》が捜査《そうさ》を開始した当時から、事態がそこまで進行していたとは、私にはどうしても思えないのです。なぜかというと、大臣はその間は、平気で夜に家を空けて外出しています。勿論《もちろん》手紙は絶対につけてはおりません。とすれば、外出先で、その手紙を破き去らなければならない事態が発生したとすれば、大臣は一体どうすればよいのでしょう。
また相手が死物|狂《ぐる》いになって大臣を誘拐《ゆうかい》し、どこかに軟禁《なんきん》して、手紙の在り場所を白状させようとする手段に出ることも、考えられないではありません。勿論その時は、まだ手紙が発見されないということが、大臣にとっても大きな護身の武器となるでしょう。しかしその危険を防ぐためには、手紙は絶対に発見されてはならないのです。
デュパンの推理は理論的には、一点の矛盾《むじゆん》もないように思われます。巴里《パリ》の警視庁のやり方をよく知りぬいている大臣が、逆に手紙を露出《ろしゆつ》して捜査《そうさ》の裏を掻《か》いたという考え方は、たしかに素晴《すば》らしい着想に摺钉沥筏いⅳ辘蓼护蟆
しかし大臣はそのことに思い当たったときに、偶然《ぐうぜん》というものの力を恐《おそ》れはしなかったでしょうか。推理によって、捜査の目標は完全にそらすことが出来たにもせよ、何か偶然《ぐうぜん》の力が働いて、誰《だれ》かの手がその封筒《ふうとう》にふれることはないだろうか。――これは人智《じんち》の推《お》し測《はか》り得るところではありません。どんな数学者でも詩人でも、偶然の力に対抗して推理を進めて行くことは出来ないのです。
大臣は数学者と詩人との、相反する両面の性格を備えていました。そして詩人ほど、偶然の力の大きさを感じている者はないのです。その自然の力に抗《こう》してまで、手紙を邸内《ていない》にかくすということは、真の詩人にはなし得ない冒険《ぼうけん》ではありますまいか。
大臣は一旦《いつたん》その手紙を、邸外《ていがい》のどこかにかくしていたのではないでしょうか。それは警視庁の捜索《そうさく》の力の及《およ》ばない所です。そして一方では、三か月の間警視庁を無益につかれさせ、一方では着々と、陰帧钉い螭埭Α筏斡嫽蜻Mめて行ったのではありますまいか。
これは勿論《もちろん》フェアプレイではないかも知れません。しかし陰证摔膝榨Дⅴ抓欹い胜嗓ⅳ甑盲瑜Δ悉氦ⅳ辘蓼护蟆
このようにして三か月後には、総監《そうかん》は絶望し切って、手紙は邸内にはない、という第一の解答に到達《とうたつ》しました。
大臣の予想したように、その邸内はいわば完全に免疫《めんえき》され切ったのです。第二次の捜査がもし行われたとしても、それは情熱を欠いた、なおざりのものに過ぎますまい。
一方|陰帧钉い螭埭Α筏伟k展は手紙の使用を即時《そくじ》に必要とするかも知れない、という事態にまで進展しました。大臣は今度こそ偶然《ぐうぜん》にも対抗《たいこう》し得る、という十分の自信をもって、初めて手紙を邸内《ていない》に持ちこみ、状差しの中にさしこんだのではありますまいか。
デュパンは幸撙摔猡长长槌霭kすることが出来たのです。そのために彼の第二の解答が勝利を占《し》めたのです。しかしデュパンが、総監《そうかん》と同じ段階から出発していたら、盗《ぬす》まれた手紙を発見することは果たして出来たでしょうか。私は多分に疑いを挿《はさ》まずにはおられないのです。大臣は偶然との勝負に敗北した。デュパンは幸撙藧{《めぐ》まれて勝利を得た。
これが私のこの小説に対する、第三の解答なのです」
私は強く言い切って偅质悉晤啢蛞姢膜幛郡ⅳ饯晤啢摔悉い膜伍gにか、強い疑惑《ぎわく》と不安の影《かげ》が漂《ただよ》いはじめているのを、私は十分に見て取ったのだった。
「この第三の解答は、あなたの今お話しになった事件には、存在していないのでしょうか。私がお伺《うかが》いした限り、この事件には第一に、横井氏の自殺という解答があるように思われます。部屋《へや》の鍵《かぎ》の件と加藤氏の話とが、それを暗示します。おそらくあなたも内心では、それを疑っておられたのではないでしょうか。その割り切れない、形をなしていない不安が、あなたに起訴《きそ》を躊躇《ちゆうちよ》させるように動いたのではありますまいか。
第二の解答は、夫人が横井氏を毒殺した、という見方です。これは木炭の件によって証拠《しようこ》づけられております。あなたが後日鏡台の前の白粉箱《おしろいばこ》の中から発見された砒素《ひそ》が、有力な一つの手掛《てが》かりです。しかし私はこの事件にも、第三の解答が存在すると考えるのです。
白粉箱の中には最初から砒素がかくされてあったのでしょうか。いや白粉箱は最初からその部屋にあったのでしょうか。
あなたはその砒素を発見なさらなかったら、第二の解答をあくまで固執《こしつ》されておったでしょうか。
あなたの性格には、多分に暗示と刺戟《しげき》とに感じ易《やす》い一面が存在すると思います。あなたが私に、今日この事件のお話をして下さったのは、どういうわけだったのでしょう。私の持っていたこの小説に刺戟されたためではありませんか。そして私が今日ポ味唐钉郡螭冥螭筏妞Α筏虺证盲皮长长丐浃盲评搐郡韦颉ⅳⅳ胜郡蠀gなる偶然《ぐうぜん》とお考えですか。それと同時に、横井氏の弟があなたを訪《たず》ねて、ポ巍旱痢钉踏埂筏蓼欷渴旨垺护摔膜い普Zったのも、これも単なる偶然に過ぎないのでしょうか。
デュパンの場合は、結果に於《お》いて第二の解答も第三の解答も、一致《いつち》した点に到達《とうたつ》しました。偶然はデュパンに味方していたのです。しかしこの場合、あなたが偶然に悾钉幛啊筏蓼欷郡瓤激à皮い郡长趣稀ⅳ工伽频谌撙摔瑜盲迫藶椤钉袱螭ぁ返膜耸私Mまれた、恐《おそ》ろしい陥穽《かんせい》ではなかったでしょうか。
大臣は勿論《もちろん》、デュパンが手紙を発見するとは、予想してはいませんでした。しかし横井氏の弟は、この小説の聯想《れんそう》によって、あなたが白粉箱《おしろいばこ》の中にかくされた砒素《ひそ》を発見することを、予想していたのではないでしょうか。それではなぜ警察が捜査《そうさ》に当たった時は、発見されなかったのでしょう。その部屋《へや》の写真は撮影《さつえい》されていましたか」
彼はだまって頭を垂《た》れた。その答えは明らかに――否だったのだ。
「警察が部屋を捜索《そうさく》した時に、その白粉箱がなかったとします。勿論そんな物一つ二つの有無など、誰《だれ》も気にとめてはいないでしょう。しかし、もしその時あったものならば、誰かの手に触《ふ》れていたろう、ということはいえるでしょうね。それでいて誰にも気づかれず、あなたが初めて気がついたというのでは何だか話が上手《じようず》に撙螭扦赀^ぎるではありませんか。
それでは白粉箱を鏡台の前に置いたのは、一体誰なのでしょう。時間的にも心理的にも、横井氏の弟が一番疑われるではありませんか。いやおそらく彼以外に、そんなことをする可能性のある人間はいないでしょう。しかし彼は何のためにそんな冒険《ぼうけん》をしたのでしょうか。
彼は夫人が兄の殺人犯人として処刑《しよけい》されたならば、兄の財産をそっくりそのまま受け継《つ》ぐことが出来ます。あの兄弟には首吊《くびつ》りの足でも引っ張りかねないような、嫌《いや》なところがあるのです。
あなたは今まで余りにも、ポ瓮评恧搜;蟆钉菠螭铯筏丹爝^ぎていました。白粉箱《おしろいばこ》の砒素《ひそ》には、このような見方が考えられます。とすれば、あなたの第二の解答の根拠《こんきよ》も、全然前とは変わってくるわけですね。といって私は、横井氏を殺したのが弟の仕業《しわざ》だったなどというのではありません。彼には十分のアリバイがあります。
彼は端役《はやく》を一役、買って出ただけのことです。
といって、お手伝いや加藤氏が犯人だとも考えられないことです。とすれば残る問睿悉郡酪护抹D―夫人が横井氏を殺したか。それとも殺さなかったか。ということです。
一体夫人が横井氏を殺したという直接|証拠《しようこ》は、存在しているのでしょうか。砒素が以前からそこにかくされてあったとしたところで、私にはまだ、夫人を犯人だと言い切ることは、困難ではないかと思います。ましてそれが、最後の瞬間に持ちこまれたものであったとしたならば、この解決は一体どうなるのでしょう。あなたが夫人を犯人だと推定なさった根拠《こんきよ》は、すべて否定の否定に基《もと》づくものです。夫人が犯人でないとすると、こんなことは考えられない。
これがあなたの論理です。ところが実際の世界では、負数に負数を掛《か》けても、その結果は必ずしも正数にはならないのです。
たとえばあなたは火恪钉窑肖痢筏翁炕黏⒕艜rごろにおこされたものではない、と考えられています。
その点は私も迹贸隼搐蓼工ⅳ筏诽咳·辘夷冥摔胜盲郡趣い碛嗓坤堡恰ⅳ饯欷彝猡槌证沥长蓼欷郡猡韦馈ⅳ榷隙ǔ隼搐毪扦筏绀Δ
何度も炭火をつぎ直すためには、なるほど炭取りも必要でしょう。しかし一度|特殊《とくしゆ》の目的で、炭をおこすためならば、必ずしも炭取りの必要はないではありませんか。たとえば横井氏が、紙に幾《いく》らかの炭を包み、それをかくして部屋《へや》の中へ持って入ったとします。そしてそれをスト证沃肖扦长贰⒒疸に入れたとする。その後で包んで来た紙を、スト证侨激筏皮筏蓼Α¥长韦瑜Δ胜长趣峡激à椁欷胜い猡韦扦筏绀Δ
横井氏は神経伲嗜碎gだ、ということでしたね。それでなくても呼吸器の病気が進行してくると、神経は異常に研《と》ぎすまされてくるものなのです。彼は加藤氏の勧告によって、開放|療法《りようほう》を厳格に実行していました。ところがこの療法は、たとえ冬の最中でも窓を開けて床《とこ》につくものなのです。勿論《もちろん》、部屋の暖房《だんぼう》には十分に注意してはいるのですが。
そのような横井氏が、なぜその時に限って、部屋を密椋Г筏皮筏蓼盲郡韦扦筏绀Α¥筏馓炕黏蚍蛉摔证沥长螭坤趣筏郡趣长恧恰⒎櫎蛉棵荛'することまで彼は許すでしょうか。横井氏が床《とこ》について寝《ね》てでもおったのなら、あるいはそんなことも起こり得ないでもありますまい。しかし彼はその時、起きていたのでしょう。とすれば、ガスによって毒殺するということは、言い易《やす》くして行い難いことではありますまいか。
むしろ砒素《ひそ》が最後まで発見されなかったならば、その時にはかえって夫人を疑えるでしょう。夫人は自分で薬剤士から砒素を入手しました。たとえその殺人方法が、いかに痕跡《こんせき》を止《とど》めずに行い得るものだったとしても、その薬品の入手の方法に欠陥《けつかん》があったら、それは犯罪方法としては、完全なものとはいえません。ましてその方法が実行困難な時には、なおのことです。
そして砒素が残っていたということには、私は第三者の作意を感ぜずにはおられないのです。夫人が犯人だったとしたならば、加藤氏が訪《たず》ねて来て、夫人が通風窓を開いた時には、犯罪の成功失敗は、夫人には既《すで》に分かっていたことでしょう。成功したとすれば、最早残りの砒素の必要はありません。失敗したとすれば、夫人は同じ方法によって、ふたたび殺人を計画するような気を起こすでしょうか。むしろ一旦《いつたん》薬を捨てて、別の方法を進めようとするのが自然ではありませんか。
もしまた夫人が犯人でなくても、横井氏が不自然な死に方をし、夫人が砒素の在り場所を知っていたとしたら、何よりも先《ま》ず自衛のために、それを捨てようとするのが自然でしょう。
砒素が残っていたということは、夫人自身もその在り場所を知らなかったことを物語っているのです。
それならば、私たちは再び第一の解答に帰らないわけには行きません。横井氏が自殺したと考える時に、初めてこの事件の秘密が解けるのではないでしょうか。
その動機は、嗜虐《しぎやく》性の極度まで進展したものといえるでしょう。彼は変態的な愛情を満足させるために今まで三人の女性をその犠牲《ぎせい》としました。ところがその欲望はますます進行して行きます。刺戟《しげき》というものは、一度満たされれば、更《さら》に強烈な刺戟を求めてやまないのです。
しかし彼の生命の火は、今や燃えつきようとしています。彼の肉体は最早、彼の神経と官能とを、満足させる力がありません。だが彼は自分の一度手に入れた物に対しては、貪慾《どんよく》ともいうべき執着《しゆうちやく》を持っています。消えようとする燈火《とうか》が最後の光芒《こうぼう》を放つように、彼は一世一代の大芝居《おおしばい》を打とうとしたのではないでしょうか。
遂《つい》に征服し得なかった妻が、他の男の手の中に眠《ねむ》るかも知れないということは、彼の到底《とうてい》忍《しの》べないことだったのではありますまいか。彼はあと半年か一年の自分の生命を犠牲にしても、妻の後半生を俊钉筏小筏辘膜堡皮筏蓼Δ趣筏郡韦扦悉胜い取⒄l《だれ》がいえましょう。それがサディズムの極致《きよくち》なのです。
彼は何かの理由をつけて、夫人に砒素《ひそ》を入手させ、加藤氏に夫人の砒素を暗示するようなことをほのめかして、遂《つい》に自らの生命を断ったのでしょう。
砒素《ひそ》を使用した理由も、私にはよく分かるように思うのです。あなたはドストエフスキ巍簮欕憽钉ⅳ欷