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第7章

幽霊西へ行く(日语原文)-第7章

小说: 幽霊西へ行く(日语原文) 字数: 每页3500字

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 金田青年に食ってかかった、松前明と日高晋は、昨日《きのう》の四時、弥生を新宿《しんじゆく》駅で自動車から降ろしたという、最後の手がかりを得た。だがそのあとの足どりは、依然《いぜん》として知れなかった。
 夕食の席には、新しく二人の人物が加わった。枺─椁浃盲评搐俊左姲作住钉悉悉膜悉激蟆筏坞懨健钉欷い肖ぁ贰⒋◢u|玄斎《げんさい》と、新劇俳優で、最近知性を持った二枚目として、映画にも進出し、メキメキと売り出した、山本|譲治《じようじ》である。
「ねえ、松前君、奥《おく》さんがおいでにならなくっちゃ、われわれがこうして、ご厄介《やつかい》になっているのも申しわけない話だ。今晩から、ホテルへ引きあげようじゃないか」
 日高晋は、聞こえよがしにいった。
「ご窮屈《きゆうくつ》でしたら、別におひきとめもいたしませんが……」
 天野憲太郎は、つめたく答えた。
 高島警部は、食卓に流れる、無気味な空気に、空恐《そらおそ》ろしい思いを禁じ得なかった。
 天野憲太郎、松前明、日高晋、山本譲治、川島玄斎……この人々は、みな何気ない顔をして、黙々《もくもく》と食卓《しよくたく》に坐《すわ》っている。おそらくは、その中に、弥生の行動の真相を知っている人物があるには摺钉沥筏い胜い韦坤⒄l《だれ》一人、それを口走ろうとする者もない……
 警部の頭の中には、その時恐ろしい考えが閃《ひらめ》いた。
「川島さん、あなたの降霊術《こうれいじゆつ》は、ほんとうに信用出来るものですか」
 霊媒は、ピクリと白い眉《まゆ》をあげた。
「信じないお方には分かりますまい」
「私は、もともと無神論者でしてね」
「お気の毒なお方ですな。あなたの霊魂《れいこん》は救われませんぞ」
「明日《あす》をも知れない人生です。死後の世界のことなど憂《うれ》うるにあたりません。でも、もしあなたが、私の不明を啓発《けいはつ》して下さるおつもりなら、今晩、私の指定する、亡霊《ぼうれい》をよび出してもらいたいのです」
 年よりか、若いのか分からない、この霊媒《れいばい》は悠々《ゆうゆう》白髯《はくぜん》をしごきながら、
「承知しました」
 と答えた。
 九時すぎて、人々は青山|荘《そう》の一室に、円いテ芝毪颏悉丹螭腔幛筏俊¥郡烂稚我巫印钉い埂筏坤堡n車の歯のぬけたように空いていた。燈《あかり》が消えた。漆《うるし》のような暗闇《くらやみ》の中、羽虫の翅《はね》のひびきのような、霊媒のかすかな呪文《じゆもん》が流れはじめた。聞こえるか、聞こえないかのその声は、次第次第に興奮の度を加え、破《わ》れ鐘《がね》のように部屋中に鳴りひびいた。
「高島さん、霊魂《れいこん》の名を呼んで下さい」
 警部の右|隣《どなり》に坐《すわ》っている、天野憲太郎がささやいた。
「上杉弥生……上杉弥生……」
 高島警部は、決然とこの女の名を呼んだのである。
 呪文《じゆもん》の声が、パタリとやんだ。太古のような沈黙《ちんもく》がその後につづいた。声もなく、衣《きぬ》ずれの音さえ聞こえぬ深い静寂《せいじやく》。
 かすかに聞こえる声があった。すすり泣き、むせび泣きにも似た、男とも女とも分からぬ声が聞こえて来た。
「誰《だれ》……わたしの名をよぶのはどなた……」
「私です。警視庁の高島竜二です。奥《おく》さん、私とのお約束《やくそく》をはたしていただけますか」
「どんな……お約束……」
「あなたは生きてはいませんね。いま幽冥界《ゆうめいかい》の彼方《かなた》をさまよっているわけですね」
「はい……わたしは、たしかに殺されました……」
「その死体は、どこにあるのです、亡骸《なきがら》はどこに残っているのです」
「この家です……わたしの部屋《へや》の、洋服|箪笥《だんす》の中なんです……」
「その犯人は」
「…………」
「あなたを殺したのは誰《だれ》なんです」
「…………」
 沈黙《ちんもく》の中に、かすかなすすり泣きが、長く尾《お》をひいて残っていた。
「燈《あかり》を! 燈を!」
 誰《だれ》かの叫《さけ》ぶ声がした。椅子《いす》を蹴《け》って、立ち上がる音が聞こえて来た。と見る間に、天井《てんじよう》のシャンデリアは、色青ざめて坐《すわ》っている、人々の顔を照らし出した。
 スイッチを入れたのは、金田晴信であった。天野憲太郎は、苦しそうに、胸のあたりをおさえている。日高晋は、警部の視線を恐《おそ》れるように顔を伏《ふ》せると、ハンカチにはげしく咳《せき》こんだ。川島|霊媒《れいばい》は、口を大きく開けてしまって、呆然《ぼうぜん》自失の態《てい》だった。
 誰《だれ》一人、生色のある者はない。誰一人、動き出そうとする者はない。
 数分後、初めて山本譲治が口を開いた。
「警部さん……これはいったい……何というお芝居《しばい》です……失礼な……僕《ぼく》はこれで……」
「お待ち下さい……」
 警部はするどく言い切った。
「この部屋《へや》から、出て行かれるのはご随意《ずいい》ですが、後で重大な嫌疑《けんぎ》がかかるかも知れませんよ。
 私が帰って来るまで、皆《みな》さん、このままになすっておられた方が無難でしょう」
 警部は、X線のような視線を、人々の上にあびせかけると、静かに部屋《へや》を出ていった。
 一分、二分、時はすぎた。五分、六分……人々は、ロダン作カレ问忻瘠稳合瘠韦瑜Δ恕⑸韯婴护膜筏胜盲俊
 十分後、警部は初めて部屋に帰って来た。その面上には、もはや温容はどこにもなかった。彼は私人、高島竜二ではなかった。つめたい法の代表者、警視庁|捜査《そうさ》主任であった。
「皆さん、私は降霊術《こうれいじゆつ》の神秘さを、今夜初めて知りました」
 警部の声はするどかった。
「弥生さんは、生前の私との約束《やくそく》を、たしかに果たしてくれました。たしかに、あの人の死体は、あの部屋の洋服|箪笥《だんす》の中に発見されました……」
 仮借《かしやく》ない言葉は、さらにつづいた。
「しかし、私は今の言葉が、幽霊《ゆうれい》の言葉だったと信ずるような神秘論者ではありません。あの言葉は、たしかに生きた人間の口から出たものです。上杉弥生殺害犯人は、いまこの部屋に、皆さんの中にいるのです!」

    4

 動かざること林のごとく、来《きた》ること風のごとし――高島警部は、日ごろ愛誦《あいしよう》する一句を、口の中でかみしめながら坐《すわ》っていた。
 弥生は絞殺《こうさつ》されていた。後頭部には、鈍器《どんき》の一撃《いちげき》のあとが残っていたが、それは致命傷《ちめいしよう》というほどのものではなく、昏倒《こんとう》させる程度のものにすぎなかった。兇行《きようこう》の推定時間は、二十四時間前――敢《あえ》て解剖《かいぼう》を待たなくても、警部は自分の眼《め》に一時間と狂《くる》いがあるとは思えなかった。
 とすれば、弥生が殺害されたのは、昨夜自分が熱海へ車を走らせている間の出来事にちがいなかった……
「失礼かは知れませんが、皆《みな》さんに一応おたずねしておきたいのは、昨夜の皆さんの行動なんです……」
「アリバイを立てろ――とおっしゃるのですね」
 松前明が、かわいた口をひらいた。
「忌憚《きたん》なく申しあげれば……その通りです」
「私はこの家に泊《と》めていただいております。もちろん弥生さんのご招待です……昨夜は、九時まで、ロケ隊といっしょに宿屋で、今日からかかるはずだった、撮影《さつえい》の準備をしていました。それからこちらへ帰って来て……十一時に、会社のトラックがつきましたから、あの支那鞄《しなかばん》をおろすのを監督《かんとく》して、それから床《とこ》に就《つ》きました……」
「日高さんは」
「七時から十一時まで、糸川の常盤屋《ときわや》という家にいた。朱実《あけみ》という子に聞いてもらえばわかる。糸切歯のきれいな女だったよ」
「川島さんはいかがです。現実世界においででしたか、それとも幽冥界《ゆうめいかい》をさまよっておいででしたかね」
「昨夜はやっぱり、枺─墙惦憽钉长Δ欷ぁ穼g験がありましてね……淀橋《よどばし》の村松さんという、社長さんのお邸《やしき》で……これなら、何人も証人があるから大丈夫《だいじようぶ》です」
「まさか、あなたの霊魂《れいこん》が、宙をとんで熱海へあらわれて、弥生さんを、しめ殺したんじゃないでしょうね」
「と、とんでもない!」
「あなたの神通力にも、やっぱり限度があるようですね。山本さんは……」
 警部は、眼をこの俳優の顔に移してハッとした。その秀麗《しゆうれい》な白皙《はくせき》の顔には、深い言い知れぬ苦悩《くのう》の色が浮《う》かんでいる。
「正式のお取眨伽坤盲郡椤⑸辘筏ⅳ菠胜い长趣猡ⅳ辘蓼护蟆筏贰⒐_の席上では、個人の秘密は、守っていただきたいのですが」
「細かなことは別としても、枺─摔椁欷郡岷¥摔い椁盲筏悚盲皮い郡ⅳ饯韦挨椁い韦长趣稀ⅳ盲筏悚盲皮い郡坤堡毪扦筏绀Δ汀
「一日中……枺─扦筏俊
 彼は聞こえるか聞こえないか、という声で答えた。
「私はこの二、三日、熱海に来たきりです。一歩も家を離《はな》れません。ですから、この家で弥生が殺されたとしたら、一番|嫌疑《けんぎ》がかかるのは、私ということになりましょうね」
 天野憲太郎は、吐《は》き出すような眨婴谴黏à俊
 熱海警察署の一行が、青山|荘《そう》に到着《とうちやく》したのはこの時である。主任の棧钉袱铯椤肪垦aは、心から高島警部の協力を求めた。
「高島さん、あなたはいったい、どうお考えです。二時すぎに、あの寝室《しんしつ》にいたという人間のことを」
 ドリルの仇名《あだな》を持っている、若い棧垦aは、脳天《のうてん》からしぼり出すような声でたずねた。
「初めは弥生さんかと思っていましたが、その本人が、その前に殺されているとすると、幽霊《ゆうれい》でもあらわれたというわけですかね」
「幽霊がハムサンドを食べたというんですか」
「枺─摔稀⒚驻蚴长τ碾懁蛉摔い郡饯Δ扦工汀
 棧垦aは苦笑した。
「問睿熄D―この家に帰って来た、弥生さんの姿を、誰《だれ》も見てはいないということです。十二時までは、女中も起きていたのですし、表門を開いていたのですから、帰って来たら気がつかないわけはないんです。ところが十二時までは、あの寝室《しんしつ》に入った人間はいないはずなんです」
「鍵《かぎ》は二つありますが、お手伝いが一つあずかって、本人が一つ持っていたそうです。旦那《だんな》さんさえ、持っていないそうですから、こういう夫婦関係も分かりませんなあ」
「人情の機微《きび》は、第三者のあずかり知るところではありませんよ。そのほかには」
「近所の聞きこみは、昨夜の二時ごろ、この家の裏門から入って来た人間があるそうです。男か女か分かりませんが、盲荬し啊钉栅饯Α筏颏筏皮い郡饯Δ扦埂¥趣长恧⒀Y門の錠《じよう》は、お手伝いがちゃんとかけておいたそうですし、今朝もかかっていたそうです」
「すると、誰かこの家にいた者が、その謎《なぞ》の人物をひきいれたというわけですね。ひょっとしたら、お手伝いが男でも……」
「そんなことはないようです。二人同じ部屋《へや》に寝《ね》ていますし、そんなにすれてはいないようです。第一……」
「夫人の寝室《しんしつ》を使うわけはないということになりますね。それから、棧丹蟆⑺饯献畛酩椤⒉凰甲hに思っていましたが、あの死体は毛皮のオ些‘を着て、外出の服装《ふくそう》を整えているのに、足は靴下《くつした》だけですね。自分で、この別荘《べつそう》へやって来たとなると、靴はどういうことになりましょう」
「別荘にも、夫人の靴はありますが、それが増えてはいないんですよ」
「幽霊《ゆうれい》には足がない――というわけですね」
 高島警部は沈黙《ちんもく》した。彼には、一つ大きな疑問が、さっきから頭の中にこびりついて残っていたのである。
「棧丹蟆⒁护膜粗腋妞蛏辘飞悉菠郡い螭扦工
 彼はひかえ目に口を切った。
「何なりとうかがいますよ。私は、自分一人で功名を立てたいなどと思ってはおりません。犯人さえ捕《つかま》ってくれればそれでいいのです」
「私は今朝《けさ》、夫人の居間まで入って見ました。そしてあの二つの支那鞄《しなかばん》にさわって見ました……」
「それが……」
「一つは重くて動きもしませんでしたが、一つはまるで何も入っていないような感じでした。これを積んで来たのは、会社のトラックらしいですが、この支那鞄が、最初はどんな重さだったか、お眨伽摔胜氡匾悉ⅳ辘蓼工蓼い
 棧垦aはとび上がらんばかりに驚《おどろ》いた。
「高島さん、あなたはそれじゃあ……」
「いや、私はただ、あらゆる可能性をしらみつぶしに追求して行くだけですよ」
「承知しました。すぐ連絡《れんらく》を出しましょう」
 彼は立ち上がって、部屋《へや》から出て行った。
 入れかわりに、応接室へ入って来たのは、例の川島|霊媒《れいばい》だった。
「警部さん、私は……その、ちょっと申し上げたいことがあるんです」
「何でしょう。まあ、おかけ下さい」
 相手は、椅子《いす》の肘掛《ひじか》けを、グッと両手でにぎりしめながら、しばらく口ごもっていた。夕食の時までの、あの昂然《こうぜん》とした態度は、どこかに影《かげ》をひそめていた。
「警部さん、実はおことわりしておきたいのですが……あの時、あんな言葉を吐《は》いたのは決して私ではないんです」
 警部は皮肉な笑いをもらした。
「それはもちろんそうでしょう。あなたは知らず知らずの間に、

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